プロデューサーさぁ、
ぜ~ったいあたしたちが驚くの、面白がってるよねぇ。
きっとそういう趣味なんだ。性格悪い。変態。
まぁまぁ、たしかに急な話だったけど──
ユニットメンバー同士で一緒に暮らして、
お互いのことを知れ──ってコトでしょ?
いい考えだと思うわ。
これから1年間、運命共同体なんだし。
まぁ、ひとり部屋より寮費安くなるってゆーし、
あたし的にもありがたいかなー。
引っ越しなんて面倒。練習時間が減るだけ。
みんなでやればすぐよ。
ほら、今日中に、荷物運んじゃいましょう。
さぁ、ここがわたしたちの部屋よ!
お~、いいじゃんいいじゃん!
3人で暮らすには狭すぎるような。
人数分のベッドを置くスペースないよ。
布団敷けばいーし、じゅーぶんじゅーぶん。
これから共同生活を送っていくわけだけど──
先に言っておくわ!
ごはんは、全部わたしが作るから!
寮にも学園にも、食堂があるでしょう。
わたしたちは全員、毎朝4時に起きるじゃない?
食堂がやってないわ。
エッ、わたしも4時起きすんのぉ?
当たり前でしょ?
⋯⋯息ぴったりやん。仲良しかよ。
き、気持ち悪いこと言わないで。
いーい? 食堂のメニューは、ものすごーく
よく考えられているけど、あくまで万人向け。
だからわたしが作ってあげる!
あなたたちにとって最適な──
トップアイドルになるための食事をねっ!
わたしの特性手料理を毎日3食、食べなさい!
そうすれば、理想的なアイドルのカラダが手に入るわ。
⋯⋯ッ! ず、ずいぶん自身があるみたいだけど⋯⋯
根拠はあるの?
専門家のお墨付きをもらってあるわ。それに⋯⋯
わたしたち姉妹は、ずっとわたしの特性手料理を食べて
結果を出し続けてきたのよ。
⋯⋯⋯⋯ふとらない?
見なさい、わたしの美しいボディラインを!
ふ、ふぅん⋯⋯
そこまで言うなら、私も食べてみよう、かな。
あ、待って待って、
食事代って、寮費に入ってるじゃん。
余分なオカネ使いたくないんだけど~。
お金なんて、もらうつもりないけど?
はあ~? ダメに決まってるだろ、そんなの。
メンバー同士で貸し借りを作るとかさぁ──
農家やってる祖父が、食材を送ってくれるのよ。
妹とふたりじゃ食べきれないくらい。
一緒に食べてくれるなら、むしろ助かるわ。
それでも気になるっていうなら、
あなたが納得するぶんだけ、支払って。
ん~⋯⋯そういうことなら⋯⋯甘えとく。
決まりね。ひひ~、
さっそく今夜から、腕を振るわせてもらうわっ!
お~、期待してる~。
うんッ、お姉ちゃんにまっかせなさい!
⋯⋯あ、意外と美味しい。⋯⋯身体にはよさそう。
うっまー! お姉ちゃん、やるね~!
えへへへへぇ⋯⋯でっしょ~?
遠慮しないで、食べて、食べてっ♪
(お姉ちゃんって呼ぶと、めっちゃ喜ぶなこいつ)
ところで、夕食の時間が早くない?
まだ夕方じゃん。外明るいじゃん。
だって8時前には寝るもの。
うえぇ早!?
早くないでしょ。朝4時に起きるんだから。
夜起きててどうするの? レッスンできないのに。
いや⋯⋯テレビとか⋯⋯電話とか⋯⋯
つか、あたし今日はバイトないからいいけど!
帰りが夜になることだってあるんですけどぉ!?
夕食用のお弁当を作ってあげるわ。
先に寝るから電気つけないでよ。
⋯⋯⋯⋯うっす。
(こいつらまじか。⋯⋯まじかぁ~~~~)
(最低でも1年間、このふたりと一緒⋯⋯ね)
(ウワ~⋯⋯どーなることやら)