わたしと来なさい、月村手毬!
(胸が、熱い)
(心に、燃える火を投げ込まれたような)
(つい⋯⋯はい、と、言いかけて────)
まりちゃん。
⋯⋯ずっと一緒に、夢を目指しましょうね。
(ぎりぎりで、踏みとどまった)
(本当は、自分でもわかってる)
(私は、ただ、ワガママなだけだって)
(仲間の気持ちや都合を無視して、)
(やりたいようにやってきただけだって)
(なのに、みんなが私に合わせてくれないことに)
(拗ねて⋯⋯逃げて、迷惑をかけて⋯⋯)
(台無しにして⋯⋯)
(最低な私は⋯⋯それでも、夢を諦められなくて)
(これからはひとりでやろう)
(そう決めたんだ。⋯⋯それなのに)
だから、あなたがいいの。
(いまになって、どうしてそんなことを言うの!?)
悪いけど、
私はあなたが思っているようなやつじゃないよ。
そうなの?
うん。期待されても困る。それに、私の噂──
色々言われているの、知っているでしょう。
あれは、全部、ほんとうのこと。
だから⋯⋯私には関わらない方がいい。
(これでいい)
(もう二度と、ユニットは組まないって決めたんだ)
(私のワガママで、仲間に迷惑をかけるのは⋯⋯)
(なにもかもを台無しにするのは⋯⋯もう嫌だから)
ん~、んんん~~~~~~~~~~っ!
ああもーーッ、メンドくさい!
噂がほんとうかなんて、どうでもいいわ!
あなたの気持ちも関係ないっ!
あなたを3人目にする! そうわたしが決めたのよ!
大人しく言うとおりにぃ~~~~~~~~~!
あいひゃたたた!? あ、あにすんのよことね!!
こっちの台詞だバカぁ!
黙って聞いていたら、ムチャクチャ言いやがって~!
ゴメンね? うちのバカが──
あ、そうだ。この場にはプロデューサーもいないし、
あたしからも、本音で一言いい?
あたし、あんたのことキラーイ♪
なっ⋯⋯!
意識高ぁ~いみたいなおすまし顔で、
上から見下してくるトコとかさぁ、
イライラするんだよねぇ。
成功しかけてたくせに、ちょっと喧嘩したくらいで、
恵まれた立場を捨てちゃうところとかぁ──
後々響きそーな悪い噂を否定もしないで、
悲劇のヒロインぶってスカしているところとかぁ──
ぜぇ~んぶキライ。
ほんとにトップアイドルになる気あんの~?
あ⋯⋯あなたにっ、私のなにが⋯⋯!
そりゃわかんないよ。他人だもん。
だけど、あたしは、あんたと一緒に仕事がしたい。
もしも悪い噂が全部本当で、
あんたが、マジで性格終わってる最低のやつでも⋯⋯
3人目は、あんたがいい。
⋯⋯⋯⋯⋯なんで、そんな、こと。
私のこと──嫌いなんでしょうっ!?
決まってんじゃん。
決まってんじゃん。
顔がよくて、歌が上手いから!
──ふざけないで。
ちっともふざけてねーし。
今年の内部進学組なら、みーんな知ってるよっ。
月村手毬は、頭がよくて、歌がめちゃ上手くて、
練習の鬼で、向上心のカタマリで──
中等部では、トップだった、ってさ。
あたしにとっては、雲の上の人。
そんなやつと、ユニット組めるとかっ!
大チャンスじゃん? 好きとか嫌いとか、
これまでの経緯とか、全部どーでもいーよ。
あたしたち、お友達でもなんでもねーし?
ユニット組んでも、仲良くなんてできるわけねーし?
たぶん、色々、前の仲間みたいにはならない。
それでよけりゃ、一緒にやろーぜっ。
私、あなたのこと嫌いだけど?
うん、知ってる~。
花海のことも、嫌いだけど?
あたしもきらーい♪
えぇぇ!? そうなの!? なんでぇ!?
こんなに可愛くて才能あって性格もいいのに???
そーゆーとこだよ!
⋯⋯ぷっ。
くふ⋯⋯ふふふっ⋯⋯なに、それ⋯⋯?
こんなにバラバラなメンバーで⋯⋯
⋯⋯ユニットを組んじゃうの?
⋯⋯はぁ⋯⋯なんだか、
色々気にしてたのが、バカらしくなってきた。
よく考えたら──大嫌いなあなたたちに
迷惑かけたって、心は痛まないもの。
ユニット、入ってあげるよ。
せいぜいあとで、後悔すれば。
(もう、遠慮しなくていいんだ)
(新しい仲間の前では)
(思いっきり、自分を出してもいいんだ!)
(いつも心と違うとこを言う私の口は⋯⋯)
(珍しく、思った通りに動いてくれた)
私は必ず、トップアイドルになってみせる。
──足を引っ張ったら、殺すから。