あなた、すっごいじゃない!!
⋯⋯急に訪ねてきたと思ったら⋯⋯
いま何時だと思っているの?
朝の4時よ! これから走りに出るんでしょ?
一緒に行くわ、話があるの。
⋯⋯あなたと話すことなんてない。
あっそう。でもこっちにはあるから。
あなたたちのライブ映像を観たの!
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
素敵だったわ! わたし、井の中の蛙だったみたい!
あなたが正しかった。この間はごめんなさい!
えっ⋯⋯
(い、意外といい人⋯⋯なのかも)
話って、それだけ?
声が大きくて近所迷惑だし⋯⋯もう帰って。
いーえっ、本題はこれからっ! 走りながら話すわ!
ほらっ、早く準備して! 行きましょう!
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
あああっ!! なんで閉めるのよ~~~~~っ!
開けなさぁ~~~~~~~~~いっ!!
⋯⋯なにあいつ。
(あんなにキツい言い方をしちゃったのに⋯⋯)
も~、先行っちゃうからね────
(ちっとも気にしていないみたい)
──放課後。
こらーっ! 手毬!
今朝は結局走りにこなかったでしょ~!
ええ、あなたと話したくなかったから。
だからって、練習サボったらダメじゃない!
いままで、毎朝走ってたんでしょう?
うっ⋯⋯⋯⋯それは、そう、だけど。
い~い? トップアイドルになりたいなら、
もっと頑張りなさいっ!
あ、あなたに言われなくたって!
ならいーわっ、ふふん。
断っておくけど、あなたと一緒に走る気はないから──
ぎゃあ!? な、なに!?
うん、やっぱり⋯⋯全身くまなく鍛えられているわね。
下半身もいい感じ。スポーツとか、やってた?
(あ、あんまり触らないで欲しいんだけど⋯⋯)
⋯⋯なにも。3年間、レッスンを受けてきただけ。
⋯⋯それが?
あのね──わたし、アイドルを舐めてた。
ず~っと、色んなスポーツやってたからさ。
身体を動かすことで負けるわけないって、
そう思ってたの。
でも、入学早々、あっさり負けちゃった。
自信があったダンスで⋯⋯ことねに。
内部進学組の人たちって⋯⋯
アイドルって、すごいのね。
手毬。わたし──
あなたと、ユニットを組みたい。
⋯⋯私は、ユニットなんて組みたくない。
どうせ、誰も⋯⋯私には付いてこられないから。
(付いてきては、くれないから)
ふふん、そうかしら?
なに? ⋯⋯自分なら、私に付いてこられるとでも?
はぁ? バッカね~、勘違いしないでくれる?
わたしがあなたに付いていくんじゃないわ──
あなたが、わたしに付いてくるの!!
────え?
言ってたわよね『仲間が役立たずだから抜けた』って。
な~んかやたらとツラそーに。
それのなにが悪いの? そぉ~んな当たり前のことで、
いつまで悩んで暗くなってるつもり?
わたしはね──わたしに追いついてこないやつらを、
いちいち待ってなんてやらないわ!
どんなに大切な仲間だろうとよ!
だってわたしは、トップアイドルになるんだもの!
頂点を目指すんだもの! だからっ⋯⋯
足手まといはいらない。わたしを追い抜いて、
どんどん置き去りにしてしまうような──
そんな心強い仲間が欲しい!
だから、あなたがいいの。
──────────
わたしと来なさい、月村手毬!