⋯⋯はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯はっ⋯⋯⋯⋯
(身体を動かしている間だけは、)
(悩みを忘れられる──)
(そんなの嘘)
みんな! どうしてわかってくれないの!?
私たちなら、もっと上を目指せる!
だから、もっと、もっと──
『頑張ろう』って?
いい加減にしてくれない? うんざりなんだけど。
⋯⋯⋯⋯!! で、でも⋯⋯!
まりちゃんは⋯⋯がんばりすぎだと思います。
このままじゃ、きっと、潰れてしまう──
走るのをやめて⋯⋯一緒に⋯⋯歩きましょう?
⋯⋯そんなの⋯⋯できるわけない。
私は⋯⋯絶対⋯⋯止まってやらない⋯⋯!
おはよ!
ひゃ!?
あ、あなたは────
なんの用?
ん~? わたしも、ここ走ろっかなって。
邪魔。別のところに行って。
イヤよ。ここが一番走りやすいコースだもの。
そっちが移ればいいじゃない。
このコースを走ると決めたの。そっちが移って。
べーっ。
⋯⋯っ。なら、勝手にすれば。
言われるまでもなく、そーするわ。
(こんなやつ⋯⋯引き離してやる)
ねぇねぇ。なんでユニット解散したの?
なっ⋯⋯あ、あなたには関係ない。
大ありよ。プロデューサーも、ことね先輩も、
あなたを仲間にしたい──って言うんだもん。
(えっ⋯⋯⋯⋯あの人、1年生だったはずじゃ?)
(⋯⋯りゅ、留年してたんだ⋯⋯)
⋯⋯プロデューサーに聞いたら?
教えてくれないのよ。プライベートだから──って。
じゃあ、あの先輩に聞けばいい。有名な話だし。
もう聞いた。悪い噂ばっかり。
あることないこと、た~っぷり聞かされたわ。
でもさ、噂は噂じゃない?
尾ひれとかも付いてるだろーし。
だから、直接本人に聞いているの。
⋯⋯そう。なら、教えてあげる。
ずっとまとわりつかれたから、うっとおしいし。
私以外のメンバーが、役立たずだから、抜けたの。
それだけ。
ふーん?
なに?
それ、ウソでしょ?
なっ!?
ひひ~、やっぱり。だいたいわかったわ。
じゃ、お先~。
⋯⋯ッ!! 待ちなさい!!
うわ、無理して付いてこないほうがいいわよ?
うるさいっ! なんなのあなた!
花海咲季! 未来のトップアイドルよ!!
なっ────
あなたは?
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
⋯⋯月村手毬。
トップアイドルになるのは、あなたじゃない。
私だから!
そう! じゃあ、手毬!
もっともっともぉ~っと頑張って、
追いついてきなさい!
⋯⋯はぁ⋯⋯はぁっ⋯⋯この⋯⋯! 偉そうに⋯⋯!
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
(『もっと頑張れ』なんて声を掛けられたのは⋯⋯)
(⋯⋯いつぶりだろう)
(もう、思い出せなかった)