藤田さん。廊下を走ってはいけませんよ。
えぇ⋯⋯? そんな場合じゃなくないです?
大丈夫、咲季さんの行き先はわかっています。
先回りしましょう。
(は? なんで行き先わかるの?)
⋯⋯アイドルに発信機とか付けてませんよね?
ところでぇ⋯⋯
説得って、どーするつもりなんです?
取り付く島もなさそーな感じでしたけど。
咲季さんがユニットを組みたくない理由は、
彼女が自分で言った通りなんです。
ですから、それをなくしてしまえばいい。
ふーん⋯⋯くわしーんですね? あの子のコト。
⋯⋯ひとりだけ名前呼びだし。
念入りに調べましたから。
(⋯⋯ごめんプロデューサー)
(やっぱ、ストーカーっぽいって)
あ! 見つけた! 花海ちゃ~ん!
プロデューサー⋯⋯なに? さっそく気が変わった──
ってわけじゃなさそうね?
(あたしは無視かよ。うっざ~)
(ほぼ初対面なのに、このえらそーさはヤバいでしょ)
(あたし、すでにコイツきらーい)
(⋯⋯でも、ガマンガマン⋯⋯)
(くふふ⋯⋯こいつには、あたしが成り上がるために)
(役に立ってもらわなきゃいけないからね~)
あたしぃ、花海ちゃんとユニット組みたいな~って♪
絶対イヤって言ったはずだけど?
足手まといはいらないから?
そーよ!
(すっげー自信)
(⋯⋯プロデューサー、どうするつもりだろ)
では、足手まといではないことを証明しましょう。
咲季さん。
入学試験で、一番得意な科目はなんでしたか?
ぜんぶ得意だけど────
一番はダンスね。それがなに?
藤田さん。
咲季さんとダンス勝負をして、勝ってください。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
はぇぇッ!?
ちょ、ちょちょちょ、
いまなんか、とんでもないコト言いませんでした!?
咲季さんが最も得意だというダンスで、
彼女をやっつけてください。
そうすれば、足手まといでないことを証明できます。
そりゃそーですけどぉッ!?
(なに考えてんだこの人ぉ──ッ!)
(あたしの成績知ってるくせに!)
(落ちこぼれだって知ってるくせにぃっ!)
ねぇ⋯⋯本気で言ってんの?
このわたしが、そいつに負けるって?
はい。
面白いじゃない! 乗ったわ、その勝負!!
わたしが負けたら、
ユニットでもなんでも入ってあげる!
その代わり、あたしが勝ったら、
あたしだけのプロデューサーになるのよ!
いいでしょう。
(ぎゃ~~~~ッ!)
(な~んでそんなに自信満々なんだよぉ~~~ッ!)
勝負はいつ?
明後日、ダンスレッスン室で。
決まりね。この学園での初勝負──
楽しみにしているわっ!
(⋯⋯目ぇキラキラさせちゃってさ)
(どんだけ勝負好きなんだよ)
そういうことになりましたので。
よろしくお願いします。藤田さん。
(そんでプロデューサーは、)
(どんだけあたしの実力を高く評価してくれてんだよ)
ハ~~~~~~~~ッ⋯⋯
しょーがないなぁ~~~っ!
きっと、なにか考えがあるんですよね?
できるだけやってみますぅ!
(こんなに信じてもらったの)
(ひっさしぶりだから、さ)
勝手に決めたんだから、
負けても見捨てないでくださいよねっ!