「アイドル」
それは わたし達の永遠の憧れ
夜空に輝く星のように
大地に咲く花のように
みんなの心を熱く震わせて
かなしさをやさしく包みこんで
いつも笑顔にしてくれる
そんな素敵な人になりたくて
わたしは「初星学園」の門をくぐりました───
(新入生代表による挨拶が終わる)
(入学式の厳粛な空気。心地よい緊張感)
⋯⋯いよいよだ。
(数々のトップアイドルを輩出してきた)
(国内最大のアイドル養成校「初星学園」)
(プロデューサーとして──)
(俺の新生活が始まる!)
す、すいませ〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!
入学式って、もう始まっちゃってますか!?
もう、終わるところです。
いまから入っていくのは⋯⋯難しいでしょうね。
うひゃ~、入学式当日から大遅刻!!
失敗したぁ~! どうやって合流しよう~!
皆が講堂から出てくる際に、
こっそり混ざってしまうというのは?
それです! ナイスアイデア!!
ああっ、申し遅れましたっ!
あたし、アイドル科の新入生で花海佑芽っていいます!
はじめまして!
(花海佑芽。聞き覚えのある名前だ)
こちらこそ、はじめまして。──こういうものです。
おぉ~、プロデューサー科の方だったんですね~!
──そうだっ! もしよろしければ、
あたしをプロデュースしてくれませんか!?
──唐突ですね。
はい! あたし、アイドル初心者なので!
プロデューサーさんが一緒にいてくれたら、
心強いなって!
(プロデューサー科は、信頼されているようだ)
(先輩方が作ってきた実績の賜物だろう)
初対面の人間に頼まずともいいのでは。
あなたがいいんです! 直感なんですけど──
この人なら、あたしの力になってくれそうだなって。
直感、ですか。
へへー、あたるんですよっ! あたしの勘!
ところで⋯⋯花海さん。
お名前が、生徒名簿に載ってないようですが。
ふっふっふ!
それはきっと、入学試験の成績がギリギリで、
補欠合格だったからですね!
この話はなかったことに。
ちょちょちょちょちょ!
ちょお〜〜〜〜〜っと待った!!
確かにあたし、歌もダンスも筆記もスピーチも、
ちょっぴりダメだったかもしれません!
いいや! かなりダメダメだったかもしれません!
でも! 試験では測れない、
すっごい実力の持ち主かもしれないじゃないですか!!
(押しが強い⋯⋯!)
⋯⋯な、なるほど。では、動機を聞かせてください。
──へっ?
あなたがアイドルを目指した理由。
この学園に入ろうと思った理由です。
あっ、はい。それは、ですね。
⋯⋯それは──────
勝ちたい人が、いるんです。